彼《かれ》は或《あ》る日《ひ》斯《か》ういつた。
「爺《ぢい》來《き》てから米《こめ》しつかり減《へ》つてしやうねえつて云《ゆ》つたぞう」
「うむ」卯平《うへい》は口《くち》に銜《くは》へた煙管《きせる》を徐《おもむ》ろに手《て》に取《と》つて
「おとつゝあでもあんべ」卯平《うへい》はげつそりといつた。
「おとつゝあ、何遍《なんべん》も云《ゆ》つたんだわ」卯平《うへい》は又《また》煙管《きせる》を噛《か》んで手《て》が少《すこ》し顫《ふる》へた。
「云《ゆ》はざらに」と卯平《うへい》は凝然《ぢつ》と目《め》を蹙《しか》めつゝ少《すこ》し壤《こは》れた壁《かべ》の一|方《ぱう》を睨《ね》めつゝいつた。
 霜解《しもどけ》の庭《には》を掻《か》き立《た》てゝ居《ゐ》た鷄《とり》がくるりと指《ゆび》を捲《ま》いては足《あし》を擧《あ》げて驚《おどろ》いた樣《やう》に周圍《あたり》を見《み》て、又《また》足《あし》を踏《ふ》みつけ/\のつそり歩《ある》いて戸口《とぐち》の閾《しきゐ》へ暫《しばら》く乘《の》つてずつと延《の》ばした首《くび》を少《すこ》し傾《かたむ》けて卯平《うへい》を見《み》
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