てついと座敷《ざしき》へ立《た》つた。卯平《うへい》はいきなり煙管《きせる》を叩《たゝ》きつけた。鷄《とり》は慌《あわ》てゝ座敷《ざしき》の筵《むしろ》へ泥《どろ》を落《おと》して閾《しきゐ》の外《そと》に脚《あし》を突《つ》き出《だ》した儘《まゝ》暫《しばら》く轉《ころ》がつて居《ゐ》たが、遂《つひ》には蹌跟《よろ》け/\鳴《な》き騷《さわ》ぎつゝ遠《とほ》く遁《にげ》た。白《しろ》い毛《け》が拔《ぬ》けて其處《そこ》ら中《ぢう》に夥《おびたゞ》しく散亂《さんらん》した。煙管《きせる》は鷄《とり》から更《さら》に強《つよ》く戸口《とぐち》の閾《しきゐ》を打《う》つて庭《には》の土《つち》に止《とま》つた。
「爺《ぢい》とつてやんべか」暫《しばら》くして與吉《よきち》は卯平《うへい》の顏《かほ》を覗《のぞ》くやうにしていつた。
「よこせ」卯平《うへい》は暫《しばら》く經《た》つてからむつゝりとして舌《した》を鳴《な》らしながらいつた。
「さあ」與吉《よきち》の出《だ》した煙管《きせる》を卯平《うへい》は拭《ふ》きもせずに口《くち》へ銜《くは》へた。暫《しばら》くしてから卯平《うへい》は
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