》でも卯平《うへい》は八十に近《ちか》い老衰者《らうすゐしや》である。一日《いちにち》の食料《しよくれう》がどれ程《ほど》要《い》るかそれは知《し》れたものである。それでも勘次《かんじ》は從來《これまで》よりも餘計《よけい》に費《つひ》やさねばならぬ※[#「穀」の「禾」に代えて「釆」、254−10]物《こくもつ》に就《つ》いて彼《かれ》の淺猿《さも》しい心《こゝろ》が到底《たうてい》騷《さわ》がされねばならなかつた。勘次《かんじ》は卯平《うへい》の居《ゐ》ぬ時《とき》にはそれとはなく獨《ひと》りぶつ/\と呟《つぶや》くことがあつた。與吉《よきち》はそれを聞《き》いて居《ゐ》た。彼《かれ》は、火鉢《ひばち》の前《まへ》に凝然《ぢつ》として居《ゐ》ては座敷《ざしき》へ上《あが》る鷄《にはとり》をしい/\と逐《お》ひつつむつゝりとして居《ゐ》る卯平《うへい》に小《ちひ》さな銅貨《どうくわ》を貰《もら》つては、それを口《くち》へ入《い》れたり座敷《ざしき》へ落《おと》したりしながら卯平《うへい》へ種々《いろ/\》なことを饒舌《しやべ》つて聞《き》かせた。
「爺《ぢい》」と喚《よ》び掛《か》けて
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