胡坐《あぐら》を掻《か》いて居《ゐ》ることもあつた
 與吉《よきち》は學校《がくかう》から歸《かへ》つてひつそりとした家《いへ》に只《たゞ》卯平《うへい》がむつゝりとして居《ゐ》るのを見《み》ると威勢《ゐせい》よく駈《か》けて來《き》たのも悄《しよ》げて風呂敷包《ふろしきづゝみ》の書籍《しよせき》をばたりと座敷《ざしき》へ投《な》げて庭《には》へ出《で》て畢《しま》ふ。卯平《うへい》は
「よき、待《ま》つてろ、そら」と財布《さいふ》から面倒《めんだう》に五|厘《りん》の銅貨《どうくわ》を拾《ひろ》ひ出《だ》して投《なげ》てやる。與吉《よきち》は戸《と》の陰《かげ》に居《ゐ》ては忸怩《もぢ/\》して容易《ようい》に取《と》らないで然《しか》も欲《ほ》し相《さう》に筵《むしろ》の上《うへ》の銅貨《どうくわ》を見《み》る。卯平《うへい》はさうすると又《また》のつそりと懶《ものう》げに身體《からだ》を戸口《とぐち》まで動《うご》かして與吉《よきち》の手《て》に渡《わた》してやる。與吉《よきち》は一|散《さん》に駈《か》けて菓子《くわし》を求《もと》めに行《ゆ》く。卯平《うへい》の窪《くぼ》んだ
前へ 次へ
全956ページ中557ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング