見《み》ては餘《あま》りに冷《つめた》いので、腰《こし》の痛《いた》みを思《おも》ひ出《だ》して小《ちひ》さな鍋《なべ》を借《か》りて暖《あたゝ》めた。さうしては遂《つひ》一|杯《ぱい》の酒《さけ》が欲《ほし》くなつて其處《そこ》でむつゝりと時間《じかん》を潰《つぶ》した。豆腐《とうふ》は彼《かれ》の齒齦《はぐき》に最《もつと》も適當《てきたう》した食料《しよくれう》であつた。
卯平《うへい》は身體《からだ》が惡《わる》く成《な》つてから僅《わづか》の間《あひだ》でも覺悟《かくご》をしたので幾《いく》らでも財布《さいふ》には蓄《たくは》へが出來《でき》て居《ゐ》た。彼《かれ》は何程《なにほど》節約《せつやく》しても遂《つひ》にじり/\と減《へつ》て行《ゆ》くのみである財布《さいふ》に縋《すが》つて、芒《すゝき》で裂《さ》いた樣《やう》に閉《と》ぢた其《そ》の口《くち》に何《なん》でも噛《か》み殺《ころ》して居《ゐ》るのだといふ容子《やうす》をして其《その》日《ひ》々々と刻《きざ》んで過《すご》した。彼《かれ》は一|日《にち》凝然《ぢつ》として冷《つめ》たい火鉢《ひばち》の前《まへ》に
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