すゝ》が垂《た》れてさうして雨戸《あまど》を開《あ》けてない薄闇《うすくら》い家《いへ》の内《うち》に凝然《ぢつ》としては妙《めう》に心《こゝろ》が滅入《めい》つた。毎日《まいにち》朝《あさ》から尻切襦袢《しりきりじゆばん》一つで熱湯《ねつたう》の桶《をけ》を右《みぎ》の手《て》で肩《かた》に支《さゝ》へては駈《か》け歩《ある》く威勢《ゐせい》の善《い》い壯丁《わかもの》の間《あひだ》に交《まじ》つて唄《うた》の聲《こゑ》を聞《きい》て居《ゐ》たのに、一つには草臥《くたびれ》も出《で》た爲《ため》でもあるが僅《わづか》一|日《にち》の隔《へだて》で彼《かれ》は俄《にはか》に年齡《とし》をとつた程《ほど》げつそりと窶《やつ》れたやうな心持《こゝろもち》に成《な》つた。皆《みな》の夜具《やぐ》は只《たゞ》壁際《かべぎは》に端《はし》を捲《ま》くつた儘《まゝ》で突《つ》きつけてある。卯平《うへい》は其處《そこ》を凝然《ぢつ》と見《み》た。箱枕《はこまくら》の括《くゝ》りは紙《かみ》で包《つゝ》んでないばかりでなく、切地《きれぢ》の縞目《しまめ》も分《わか》らぬ程《ほど》汚《きた》なく脂肪《あ
前へ 次へ
全956ページ中549ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング