だ口《くち》に、さうして醤油《しやうゆ》の味《あぢ》を區別《くべつ》するまで發達《はつたつ》した舌《した》を持《も》たない與吉《よきち》は卯平《うへい》が遠《とほ》く齎《もたら》したと聞《き》かせられた程《ほど》には感《かん》じなかつたのである。
「其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》こといふもんぢやねえ、そんだら※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、244−8]《ねえ》げよこしつちめえ」おつぎは小《ちひ》さな聲《こゑ》でいつて尻目《しりめ》に掛《か》けた。與吉《よきち》はさういひ乍《なが》ら手《て》にした丈《だけ》はぽり/\と噛《か》んだ。乾燥《かんさう》した響《ひゞき》が三|人《にん》の口《くち》に鳴《な》つた。
卯平《うへい》は幾杯《いくはい》も只《たゞ》茶《ちや》を啜《すゝ》つた。壯健《たつしや》だといつても彼《かれ》は齒《は》がげつそりと落《お》ちて軟《やはら》かな物《もの》でなければ噛《か》めなくなつて居《ゐ》た。卯平《うへい》は又《また》おつぎへ醤油《しやうゆ》の罎《びん》を出《だ》して
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