》るから枯燥《こさう》して憐《あは》れげであつた。彼《かれ》は少《すこ》しきや/\と痛《いた》む腰《こし》を延《のば》して荷物《にもつ》を脊負《せお》つて立《た》つた。捨《す》てた燐寸《マツチ》の燃《も》えさしが道端《みちばた》の枯草《かれくさ》に火《ひ》を點《つ》けて愚弄《ぐろう》するやうな火《ひ》がべろ/\と擴《ひろ》がつても、見向《みむ》かうともせぬ程《ほど》彼《かれ》は懶《ものう》げである。野田《のだ》からは十|里《り》に足《た》らぬ平地《へいち》の道《みち》を鬼怒川《きぬがは》に沿《そ》うた自分《じぶん》の村落《むら》まで來《く》るのに、冬《ふゆ》の短《みじか》い日《ひ》が雜木林《ざふきばやし》の梢《こずゑ》に彼《かれ》を待《ま》たなかつた。彼《かれ》は自分《じぶん》の家《いへ》に着《つ》いた時《とき》は醤油《しやうゆ》を提《さ》げた手《て》が痛《いた》い程《ほど》冷《ひ》えて居《ゐ》た。彼《かれ》は漸《やつと》のことで戸口《とぐち》に立《た》つた。勘次《かんじ》を喚《よ》ばうとして見《み》たら内《うち》はひつそりと闇《くら》い。戸口《とぐち》に手《て》を當《あ》てゝ見《み》
前へ
次へ
全956ページ中531ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング