《たばこ》一|服《ぷく》吸《す》ふべえぢやなし、十五|日目《にちめ》が晦日《みそか》でそれまでは勘定《かんぢやう》なしで其《その》間《あひだ》は米《こめ》でも薪《まき》でもみんな通帳《かよひ》で借《か》りて置《お》く位《くれえ》なんだから、十五|日目《にちめ》に成《な》らなくつちや財布《せえふ》も膨《ふく》れねえが、又《また》百《ひやく》でも出《で》つこはねえかんな」勘次《かんじ》は更《さら》に出先《でさき》のことをお品《しな》へ聞《き》かせた。
「米《こめ》ばかり炊《た》えても毎日《まいにち》一|升《しよう》づゝは要《え》る位《くれえ》だから骨《ほね》も隨分《ずゐぶん》折《を》れんが出《で》せえすりや二|貫《くわん》と三|貫《ぐわん》は殘《のこ》せつから、歸《けえ》るまでにや俺《おれ》もどうにか成《な》ると思《おも》つてんのよ、さうすりや鹽鮭《しほびき》位《ぐれえ》は買《か》あことも出來《でき》らな」
「そんぢやよかつた、土方《どかた》なんちや碌《ろく》な奴等《やつら》は居《え》ねえつていふからどうしたかと思《おも》つてな」お品《しな》は首《くび》を擡《もた》げた。
「そんな奴等《や
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