くきん》拔《ぬ》けねえで居《え》んだからそれせえなけりや泣《な》かねえでも畢《を》へんだよ、そんだがそれでばかり動《いご》き取《と》れねえな」
「そんぢや、其《そ》の時《とき》にや勘次《かんじ》さんも善《い》い理由《わけ》だね」
「そりやさうだが」勘次《かんじ》は何處《どこ》となく拍子《ひやうし》を變《か》へていつた。
「勘次《かんじ》さん等《ら》それでも※[#「穀」の「禾」に代えて「釆」、238−12]類《こくるゐ》はなか/\有《あ》る容子《ようす》だね」突込《つゝこ》んで聞《き》くと
「其《そ》の位《くれえ》なくつちや仕《し》やうねえもの、俺《お》ら此處《ここ》へ來《き》た當座《たうざ》にや病氣《びやうき》ん時《とき》でもからつき挽割麥《ひきわり》ばかしの飯《めし》なんぞおん出《だ》されて、俺《お》ら隨分《ずいぶん》辛《つれ》え目《め》に逢《あ》つたんだよ、こんでさうえこた、忘《わす》らんねえもんだかんな」勘次《かんじ》は到頭《たうとう》要領《えうりやう》を得《え》ない返辭《へんじ》をするのみであつた。
藏《くら》の親方《おやかた》は勘次《かんじ》がどういふ料簡《れうけん》である
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