》野田《のだ》への立《た》ち際《ぎは》がよくなかつたことを彼自身《かれじしん》の心《こゝろ》にも悔《く》ゆる處《ところ》があつたので強《し》ひて厭《いや》な勘次《かんじ》へ挨拶《あいさつ》をして一時《いつとき》なりとも肩身《かたみ》を狹《せま》くせねばならないのを厭《いと》うて遂《つひ》憶劫《おくくふ》に成《な》るのであつた。年齡《とし》を積《つ》むに從《したが》つて短《みじか》く感《かん》ずる月日《つきひ》がさういふ間《あひだ》に循環《じゆんくわん》して、くすんで見《み》えることの多《おほ》い江戸川《えどがは》の水《みづ》を往復《わうふく》する通運丸《つううんまる》の牛《うし》が吼《ほ》えるやうな汽笛《きてき》も身《み》に沁《し》みて、冬《ふゆ》の寒《さむ》さが酷《ひど》くなると以前《いぜん》からの癖《くせ》で腰《こし》に疼痛《いたみ》を感《かん》ずることがあつた。藏《くら》の傭人《やとひにん》の爲《ため》に抱《かゝ》へてある醫者《いしや》に見《み》て貰《もら》つても、老病《らうびやう》だから藥《くすり》を飮《の》んで見《み》た處《ところ》で、さう效驗《きゝめ》が見《み》えるのではな
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