年目《ねんめ》の盆《ぼん》にふいと來《き》てふいと立《た》つたのである。卯平《うへい》は八十に近《ちか》く成《な》つて居《ゐ》ながら恐《おそ》ろしい岩疊《がんでふ》な身體《からだ》が髮《かみ》は白《しろ》く且《かつ》少《すくな》く成《な》つたが肌膚《はだ》には潤澤《じゆんたく》があつた。卯平《うへい》は夜《よる》は火《ひ》の番《ばん》をしても暑《あつ》い日《ひ》には庭《には》の草※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《くさむしり》をしたり、他《た》の藏々《くら/″\》への使《つか》ひに行《い》つたり、幾分《いくぶん》の忙《いそが》しさを感《かん》じても、使《つか》ひに行《ゆ》けば屹度《きつと》茶菓子《ちやぐわし》を包《つゝ》まれたり、手拭《てぬぐひ》を貰《もら》つたり、それから主人《しゆじん》からは給料《きふれう》以外《いぐわい》の賞與《しやうよ》があつたりするので少《すこ》し堅固《けんご》にすれば、懷《ふところ》には小錢《こぜに》を蓄《たくは》へて置《お》くことも出來《でき》るのであつたが彼《かれ》は能《よ》くコツプ酒《ざけ》を傾《かたむ》けたので彼《かれ》の懷《ふところ》は
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