》を彼《かれ》に與《あた》へるよりも、彼《かれ》は彼《かれ》の懷《ふところ》に幾分《いくぶん》の餘裕《よゆう》を生《しやう》じて來《き》たことが凡《すべ》ての不滿《ふまん》を償《つぐな》うて猶《なほ》餘《あまり》あることであつた。お品《しな》がまだ生《い》きて居《ゐ》る頃《ころ》隣《となり》の主人《しゆじん》の内儀《かみ》さんに向《むか》つて
「お内儀《かみ》さん等《ら》何《なん》にも心配《しんぺえ》なんざ無《な》くつて晴々《せい/\》として居《え》んでござんせうね」お品《しな》はつく/″\といつたことがある。
「何故《なぜ》そんなこといふんだい」内儀《かみ》さんは怪《あや》しんで聞《き》いたら
「そんでもお内儀《かみ》さん等《ら》喰《た》べる心配《しんぺえ》なんざちつともねえんだから、わたしやさうだと思《おも》つてせえ」お品《しな》はいつた。内儀《かみ》さんは成程《なるほど》さういふ心持《こゝろもち》で居《ゐ》るのかと、それから種々《いろ/\》と身分《みぶん》相應《さうおう》な苦勞《くらう》の止《や》まぬことを噺《はなし》て聞《き》かせると
「さうでござんせうかねお内儀《かみ》さん、
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