た時《とき》巫女《くちよせ》は荷物《にもつ》の箱《はこ》を脊負《しよ》つて自分《じぶん》の泊《とま》つた宿《やど》へ歸《かへ》つて行《い》つた。
三味線《さみせん》の撥《ばち》が一|度《ど》絃《いと》に觸《ふ》れるとしんみりとした座敷《ざしき》が急《きふ》に勢《いきほ》ひづいてランプの光《ひかり》が俄《にはか》に明《あか》るいやうに成《な》つた。勘次《かんじ》はそれを聞《き》くに堪《た》へないで、彼《かれ》は其《そ》の夜《よ》に限《かぎ》つて自分《じぶん》で與吉《よきち》の手《て》を曳《ひ》いて自分《じぶん》の家《うち》へと闇《やみ》の中《なか》へ身《み》を沒《ぼつ》した。若《わか》い衆《しゆう》は三|人《にん》の後姿《うしろすがた》を見《み》て
「蛬《きりぎりす》ぢやねえが、口《くち》鳴《な》らさねえぢや居《ゐ》らんねえな」といつた。
「そんだが、今夜《こんや》はしみ/″\泣《な》いたんぢやねえけ、あんでもお品《しな》さんこた何程《なんぼ》惜《を》しいか知《し》んねえのがだかんな」
「今《いま》だつて其《その》噺《はなし》すつと幾《いく》らでもしてんだかんな」
「そんだがよ、先刻《
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