れど、草葉《くさば》の陰《かげ》で……」婆《ばあ》さんが自分《じぶん》の聲《こゑ》に乘《の》つて來《き》た時《とき》勘次《かんじ》はぼろ/\と涙《なみだ》を零《こぼ》した。おつぎもそつと涙《なみだ》を拭《ぬぐ》つた。
「ほんの假座《かりざ》のことなれば、此《こ》れにて俺《お》れは歸《かへ》るぞよう……」それから又《また》
「鴉《からす》の鳴《な》きがそでなくもう……」と反覆《くりかへ》しつゝ巫女《くちよせ》の婆《ばあ》さんの聲《こゑ》は輕《かる》く引《ひ》いてそつと拔《ぬ》いたやうに止《や》んだ。
「俺《お》れ濟《す》まねえ」勘次《かんじ》はぽつさりといつて又《また》涙《なみだ》を横《よこ》に拭《ぬぐ》つた。
「本當《ほんたう》に出《で》たんだよ、可怖《おつかね》えやうだな」其處《そこ》に居《ゐ》た若《わか》い女房《にようばう》はしみ/″\といつた。それから續《つゞ》いて他《た》の二三|人《にん》が身《み》の上《うへ》やら生口《いきぐち》やらを寄《よ》せた。さうして座敷《ざしき》の隅《すみ》に居《ゐ》た瞽女《ごぜ》が代《かは》つて三味線《さみせん》の袋《ふくろ》をすつと扱《こ》きおろし
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