なみ》は草臥《くたび》れたもんだから俺《お》ら先《さき》へ出《で》たんだがな、南《みなみ》もあの分《ぶん》ぢや今夜《こんや》もなか/\容易《ようい》ぢやあんめえよ、それに汽舩《じようき》が又《また》後《おく》れつちやつてな」
 勘次《かんじ》はいひながら草鞋《わらじ》をとつた。手拭《てぬぐひ》の端《はし》へ括《くゝ》つて來《き》た鰯《いわし》の包《つゝ》みをかさりとお品《しな》の枕元《まくらもと》へ投《な》げて、首《くび》へつけて居《ゐ》た風呂敷《ふろしき》包をどさりと置《お》いて勘次《かんじ》は庭《には》へ出《で》て足《あし》を洗《あら》つた。勘次《かんじ》はお品《しな》の枕元《まくらもと》へ座《ざ》を占《し》めた。
「そんなに惡《わる》くなくつちやそれでもよかつた、俺《お》らどうしたかと思《おも》つてな」勘次《かんじ》は改《あらた》めて又《また》いつた。
「お品《しな》おまんまは喰《た》べてか」勘次《かんじ》はつけ足《た》した。
「先刻《さつき》おつうに米《こめ》のお粥《けえ》炊《た》いて貰《もら》つてそれでもやつと掻《か》つ込《こ》んだところだよ」
「それぢやどうした、途中《とち
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