短《みじか》い文中《ぶんちう》に讀上《よみあ》ぐべき神社《じんじや》の名《な》は書《か》いてなくて何郡《なにごほり》何村《なにむら》何神社《なにじんじや》といふ文字《もじ》で埋《うづ》めてある。神官《しんくわん》は其處《そこ》に讀《よ》み至《いた》ると當日《たうじつ》の神社《じんじや》を只《たゞ》口《くち》の先《さき》でいふのである。有繋《さすが》に彼《かれ》は間違《まちが》ふことなしに讀《よ》み退《の》けた。神官《しんくわん》が卓《しよく》の横手《よこて》へ座《ざ》を換《かへ》て一寸《ちよつと》笏《しやく》で指圖《さしづ》をすると氏子《うぢこ》の總代等《そうだいら》が順次《じゆんじ》に榊《さかき》の小枝《こえだ》の玉串《たまくし》を持《も》つて卓《しよく》の前《まへ》に出《で》て其《そ》の玉串《たまくし》を捧《さゝ》げて拍手《はくしゆ》した。彼等《かれら》は只《たゞ》怖《お》づ/\して拍手《はくしゆ》も鳴《な》らなかつた。立《た》ちながら袴《はかま》の裾《すそ》を踏《ふ》んで蹌踉《よろ》けては驚《おどろ》いた容子《ようす》をして周圍《あたり》を見《み》るのもあつた。恁《か》ういふ作法
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