》を汽船《きせん》で土浦《つちうら》の町《まち》へ出《で》た。夜《よる》は汽船《きせん》で明《あ》けたがどうしたのか途中《とちう》で故障《こしやう》が出來《でき》たので土浦《つちうら》へ着《つ》いたのは豫定《よてい》の時間《じかん》よりは遙《はろか》に後《おく》れて居《ゐ》た。土浦《つちうら》の町《まち》で勘次《かんじ》は鰯《いわし》を一包《ひとつゝ》み買《か》つて手拭《てねぐひ》で括《くゝ》つてぶらさげた。土浦《つちうら》から彼《かれ》は疲《つか》れた足《あし》を後《あと》に捨《す》てゝ自分《じぶん》は力《ちから》の限《かぎ》り歩《ある》いた。それでも村《なら》へはひつた時《とき》は行《ゆ》き違《ちが》ふ人《ひと》がぼんやり分《わか》る位《くらゐ》で自分《じぶん》の戸口《とぐち》に立《た》つた時《とき》は薄暗《うすくら》い手《て》ランプが柱《はしら》に懸《かゝ》つて燻《くす》ぶつて居《ゐ》た。勘次《かんじ》はひつそりとした家《いへ》のなかに直《すぐ》に蒲團《ふとん》へくるまつて居《ゐ》るお品《しな》の姿《すがた》を見《み》た。それからお品《しな》の足《あし》を揣《さす》つて居《ゐ》る
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