とを反覆《くりかへ》して只《たゞ》悦《よろこ》んだ。途中《とちゆう》へ一晩《ひとばん》泊《とま》つたといふやうなことをいつて勘次《かんじ》が心《こゝろ》忙《せは》しく聞《き》く迄《まで》は理由《わけ》をいはなかつた。勘次《かんじ》は漸《やうや》くお品《しな》に頼《たの》まれて來《き》たのだといふことを知《し》つた。勘次《かんじ》はお品《しな》が病氣《びやうき》に罹《かゝ》つたのだといふのを聞《き》いて萬一《もし》かといふ懸念《けねん》がぎつくり胸《むね》にこたへた。さうして反覆《くりかへ》してどんな鹽梅《あんばい》だと聞《き》いた。噺《はなし》の容子《ようす》ではそれ程《ほど》でもないのかと思《おも》つても見《み》たが、それでも勘次《かんじ》は口《くち》を利《き》くにも唾《つば》が喉《のど》からぐつと突《つ》つ返《かへ》して來《く》るやうで落付《おちつ》かれなかつた。
其《そ》の日《ひ》の夜中《よなか》に彼等《かれら》は立《た》つた。勘次《かんじ》は自分《じぶん》も急《いそ》ぐし使《つかひ》を疲《つか》れた足《あし》で歩《ある》かせることも出來《でき》ないので霞《かすみ》ヶ|浦《うら
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