》の筋《すぢ》が痛《いた》んだので二三|日《にち》仕事《しごと》に出《で》られなかつた。それから六七|日《にち》たつて烈《はげ》しい西風《にしかぜ》が吹《ふ》いた。勘次《かんじ》は薄《うす》い蒲團《ふとん》へくるまつて日《ひ》の中《うち》から冷《ひ》えてた足《あし》が暖《あたゝま》らなかつた。うと/\と熟睡《じゆくすゐ》することも出來《でき》ないで輾轉《ごろ/\》して長《なが》い夜《よ》を漸《やうや》く明《あか》した。
 其《そ》の次《つぎ》の日《ひ》彼《かれ》は硬《こは》ばつたやうに感《かん》ずる手《て》を動《うご》かして冷《つめ》たいシヤブルの柄《え》を執《と》つて泥《どろ》にくるまつて居《ゐ》た。さうして居《ゐ》る處《ところ》へ村《むら》の近所《きんじよ》のものがひよつこり尋《たづ》ねて來《き》たので彼《かれ》は狐《きつね》にでも魅《つま》まれたやうに只《たゞ》驚《おどろ》いた。近所《きんじよ》の者《もの》は大勢《おほぜい》が只《たゞ》泥《どろ》のやうになつて動《うご》いて居《ゐ》るのでどれがどうとも識別《みわけ》がつかないで困《こま》つたといつて、勘次《かんじ》に逢《あ》うたこ
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