》を挽《ひ》いたりして、それから大根《だいこ》も干《ほ》したり土《つち》へ活《い》けたりして闇《くら》いから闇《くら》いまで働《はたら》いた。それでも籾《もみ》が少《すこ》しと畑《はたけ》が少《すこ》し殘《のこ》つたのをお品《しな》がどうにかするといつたので出《で》て行《い》つたのである。
 工事《こうじ》の箇所《かしよ》へは廿|里《り》もあつた。勘次《かんじ》は行《ゆ》けば直《すぐ》に錢《ぜに》になると思《おも》つたので漸《やうや》く一|圓《ゑん》ばかりの財布《さいふ》を懷《ふところ》にした。辨當《べんたう》をうんと背負《しよ》つたので目的地《もくてきち》へつくまでは渡錢《わたしせん》の外《ほか》には一|錢《せん》も要《い》らなかつた。
 勘次《かんじ》は夜《よる》ついて其《その》次《つぎ》の日《ひ》には疲《つか》れた身體《からだ》で仕事《しごと》に出《で》た。彼《かれ》は半日《はんにち》でも無駄《むだ》な飯《めし》を喰《く》ふことを恐《おそ》れた。然《しか》し其《そ》の次《つぎ》の日《ひ》は過激《くわげき》な勞働《らうどう》から俗《ぞく》にそら手[#「そら手」に傍点]というて手《て
前へ 次へ
全956ページ中46ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング