|浦《うら》に近《ちか》い低地《ていち》で、洪水《こうずゐ》が一|旦《たん》岸《きし》の草《くさ》を沒《ぼつ》すと湖水《こすゐ》は擴大《くわくだい》して川《かは》と一《ひと》つに只《たゞ》白々《しら/″\》と氾濫《はんらん》するのを、人工《じんこう》で築《きづ》かれた堤防《ていばう》が僅《わづか》に湖水《こすゐ》と川《かは》とを區別《くべつ》するあたりである。勘次《かんじ》は自分《じぶん》の土地《とち》と比較《ひかく》して茫々《ばう/\》たるあたりの容子《ようす》に呑《の》まれた。さうして工夫等《こうふら》に權柄《けんぺい》にこき使《つか》はれた。
勘次《かんじ》は愈《いよ/\》傭《やと》はれて行《ゆ》くとなつた時《とき》收穫《とりいれ》を急《いそ》いだ。冬至《とうじ》が近《ちか》づく頃《ころ》には田《た》はいふまでもなく畑《はたけ》の芋《いも》でも大根《だいこ》でもそれぞれ始末《しまつ》しなくてはならぬ。勘次《かんじ》はお品《しな》が起《お》きて竈《かまど》の火《ひ》を點《つ》けるうちには庭葢《にはぶた》へ籾《もみ》の筵《むしろ》を干《ほ》したりそれから獨《ひと》りで磨臼《すりうす
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