「幾《いく》ら嚊《かゝあ》の嫉妬《やきもち》燒《や》くもんでも、あゝえもなあねえな」
「あゝえのが何《なん》かの生《うま》れ變《かは》りつちんでも有《あ》んべな、可怖《おつかね》えやうだよ本當《ほんたう》にな」
「近頃《ちかごろ》それに何《なん》ぢやねえけえ、あら程《ほど》欲《ほ》しがつたのに後妻《あと》貰《もら》あべえたあ、云《ゆ》はねえんぢやねえけえ」孰《いづ》れの心《こゝろ》にも口《くち》にはいはなくて了解《れうかい》されて居《ゐ》る或《ある》物《もの》を少《すこ》しづつ現《あらは》さうとして有繋《さすが》に躊躇《ちうちよ》する樣《やう》にして噺合《はなしあ》うた。勘次等《かんじら》三|人《にん》が出《で》て垣根《かきね》の外《そと》へ行《い》つたと思《おも》ふ頃《ころ》、椀《わん》を拭《ふ》いて居《ゐ》た一人《ひとり》が慌《あわた》だしく立《た》つて外《そと》へ出《で》た。暫《しばら》くして歸《かへ》つて來《く》るといきなり
「どうしたものだおめえは、他人《ひと》の後《あと》なんぞ尾行《つ》けて行《い》つて、罪《つみ》だから見《み》ろよ」一人《ひとり》がいつた。
「さうぢやねえ
前へ 次へ
全956ページ中477ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング