赤《あか》く成《な》つて汗《あせ》が吊《つ》るしランプに光《ひか》つて見《み》えた。彼《かれ》は手《て》でぐるりと拭《ぬぐ》つた。
「箆棒《べらぼう》に迂遠《まだる》つけえ唄《うた》だな、此《こ》の夜《よ》の短《みじ》けえのに眠《ねむ》つたく成《な》つちやあな」側《そば》から惡口《あくこう》を吐《つ》いた。
「えゝから西《にし》のおとつゝあ、耳糞《みゝくそ》ほじくつて聞《き》いてろえ」兼《かね》博勞《ばくらう》はいつて
「はあえゝえゝ、えゝ朝《あさ》のうゝゝえゝえ、はあ出掛《でがけ》えにいゝゝゝゝえ」と又《また》唄《うた》ひ出《だ》した。
「朝《あさ》の出掛《でがけ》にどの山《やま》見《み》ても雲《くも》の掛《かゝ》らぬ山《やま》はない」と唄《うた》つて茶碗《ちやわん》を動《うご》かしては
「ぱか/\ぱか/\となあ斯《か》う、廿三|坂《さか》越《こ》えて引《ひ》く處《とこ》だぜ、畜生《ちきしやう》あばさけんなえ」と彼《かれ》は更《さら》に
「ひゝいん」と馬《うま》の啼《な》き聲《ごゑ》をしてそれから
「廿三|坂《さか》か、白河《しらかは》のこつちだ、畢《しめえ》の坂《さか》が箆棒《べら
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