女房等《にようばうら》の手《て》が俄《にはか》におつぎの臀《しり》をつゝいて
「おつうとそれ、返辭《へんじ》するもんだ」小聲《こごゑ》でいつて微《かすか》に笑《わら》つた。勘次《かんじ》は怪訝《けげん》な容子《ようす》をして柱《はしら》の陰《かげ》を凝然《ぢつ》と見《み》て目《め》を蹙《しか》めた。
「おつぎは居《ゐ》るよおめえ、さういに見《み》ねえでも」柱《はしら》の陰《かげ》からいつて私語《さゞめ》いた。勘次《かんじ》は板《いた》の間《ま》の端《はし》に近《ちか》く居《ゐ》たのであるが膳《ぜん》を越《こ》えて身體《からだ》をぐつと前《まへ》へ延《の》ばしては徳利《とくり》を動《うご》かして空《から》に成《な》つたのは女房等《にようばうら》へ渡《わた》して何處《どこ》となしに心《こゝろ》を配《くば》る樣《やう》にそわ/\として居《ゐ》る。
「はてな、懷《ふとこれ》え入《せ》えた筈《はず》だつけが」と兼《かね》博勞《ばくらう》は懷《ふところ》から周圍《あたり》を探《さが》して側《そば》へ落《お》ちた小《ちひ》さな紙包《かみづゝみ》を手《て》にして
「こうれ、うめえ物《もの》見《み》ろえ
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