ちまあから一|度《ど》でもさういに活《い》けて置《お》いたことあねえな」と一人《ひとり》がいへば
「俺《お》らなんざ、腹《はら》さ藏《しま》つて置《お》くから盜《と》られつこなしだ」兼《かね》博勞《ばくらう》は口《くち》を出《だ》した。
「牛蒡《ごばう》もうつかりして繩《なは》で縛《しば》つて活《い》けちや、其處《そこ》から腐《くさ》れがへえつて酷《ひで》えもんだな、藁《わら》は餘《よ》つ程《ぽど》嫌《きれ》えだと見《め》えんのさな」勘次《かんじ》は横合《よこあひ》からいつた。
「どうしたかよ」疑《うたが》ひの聲《こゑ》が發《はつ》せられた。
「どうしたかなもんぢやねえ、俺《お》ら家《ぢ》で行《や》つたこと有《あ》んだもの」彼《かれ》は相手《あひて》に壓《あつ》せられた樣《やう》に聲《こゑ》を低《ひく》めて
「なあおつう、さうだな」と身體《からだ》を横《よこ》に向《む》けていつた。板《いた》の間《ま》と土間《どま》との界《さかひ》に立《た》つて居《ゐ》る柱《はしら》の陰《かげ》にランプの光《ひかり》から身《み》を避《さ》けるやうにして一|座《ざ》の獻酬《けんしう》を見《み》て居《ゐ》た
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