これ》えばかし置《お》かねえで干《ほ》せな」と弱《よわ》い者《もの》の處《ところ》へ杯《さかづき》を聚《あつ》めて困《こま》るのを見《み》ようとさへする樣《やう》に成《な》つた。勘次《かんじ》は獨《ひと》り側《そば》なる徳利《とくり》を引《ひ》きつけて幾抔《いくはい》か傾《かたむ》けて他人《ひと》よりも先《さき》に小鬢《こびん》の筋《すぢ》が膨《ふく》れて居《ゐ》た。
「俺《お》ら、鉋《かんな》の持《も》たねえ大工《でえく》だ、鑿《のみ》一|方《ぽう》つちんだから」といつて勘次《かんじ》は相手《あひて》もないのに態《わざ》とらしい笑《わら》ひやうをして女房等《にようばうら》の居《ゐ》る方《はう》を見《み》た。彼《かれ》は俛《た》れ相《さう》に成《な》る首《くび》を起《おこ》して數々《しば/\》見《み》ることを反覆《くりかへ》した。おつぎは後《うしろ》の方《はう》へ隱《かく》れて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は箸《はし》を一|本《ぽん》持《も》つて危險《あぶな》い物《もの》にでも觸《さは》るやうに平椀《ひらわん》の馬鈴薯《じやがたらいも》を其《その》先《さき》へ刺《さ》しては一|杯《ぱい》に
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