とで、一|圓《ゑん》ばかりの酒《さけ》を奮發《ふんぱつ》したのであつた。其《そ》の晩《ばん》の料理《れうり》に使《つか》ふ醤油《しやうゆ》が要《い》るので兩方《りやうはう》を兼《か》ねて亭主《ていしゆ》は晝餐休《ひるやす》みの時刻《じこく》に天秤《てんびん》擔《かつ》いで鬼怒川《きぬがは》を渡《わた》つた。村落《むら》の店《みせ》では買《か》はずに直接《ちよくせつ》酒藏《さかぐら》へ行《い》つたので酒《さけ》は白鳥徳利《はくてうどくり》の肩《かた》まで屆《とゞ》いて居《ゐ》た。
 各自《かくじ》の平生《へいぜい》渇《かつ》して居《ゐ》る口《くち》には酒《さけ》は非常《ひじやう》に佳味《うま》く感《かん》ずると共《とも》に、其《そ》の痲痺《まひ》する力《ちから》に對《たい》する抵抗力《ていかうりよく》が衰《おとろ》へて居《ゐ》るので徳利《とくり》が一|本《ぽん》づつ倒《たふ》されて次《つき》の徳利《とくり》に手《て》が掛《かゝ》つたと思《おも》ふ頃《ころ》板《いた》の間《ま》では一|同《どう》のたしなみが亂《みだ》れて威勢《ゐせい》が出《で》た。
「おめえ、さういに自分《じぶん》の處《と
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