く》めていつた。袂《たもと》で口《くち》を抑《おさ》へて女房等《にようばうら》は笑《わらひ》を殺《ころ》した。兼《かね》博勞《ばくらう》は態《わざ》と笑《わらひ》を嚥《の》んで再《ふたゝ》び板《いた》の間《ま》に胡坐《あぐら》を掻《か》いた。
勘次《かんじ》は小《ちひ》さな時分《じぶん》から侮《あなど》られて能《よ》く泣《な》かされた。彼《かれ》は恐《おそ》ろしい泣蟲《なきむし》であつた。彼《かれ》は何時《いつ》の間《ま》にか燗鍋《かんなべ》といふ綽名《あだな》を附《つ》けられた。彼《かれ》は心《こゝろ》に幾《いく》ら其《そ》れを嫌《きら》つたか知《し》れない。卅|越《こ》えて四十に成《な》つても彼《かれ》は鍋《なべ》といふのが酷《ひど》く厭《いや》であつた。村落《むら》ではそれを知《し》らぬ者《もの》はない。或《ある》時《とき》惡戯好《いたづらずき》な兼《かね》博勞《ばくらう》が勘次《かんじ》の刈《かつ》て居《ゐ》る稻《いね》を、此《これ》は何《なん》だえと聞《き》いた。態《わざ》と聞《き》いたのであつた。其《そ》れは鍋割《なべわ》れとも、それから芒《のげ》が白《しろ》いので白芒《
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