退《あとずさ》りに深《ふか》い泥《どろ》から股引《もゝひき》の足《あし》を引《ひ》き拔《ぬ》き引《ひ》き拔《ぬ》き植《う》ゑ退《の》く。恁《か》うして宏濶《くわうくわつ》な水田《すゐでん》は、一|日《にち》泥《どろ》に浸《ひた》つた儘《まゝ》でも愉快相《ゆくわいさう》に唄《うた》ふ聲《こゑ》がそつちからもこつちからも響《ひゞ》くと共《とも》に、段々《だん/\》に淺《あさ》い緑《みどり》が掩《おほ》うて、多忙《たばう》で且《かつ》活溌《くわつぱつ》な夏《なつ》の自然《しぜん》は先《さき》に植《う》ゑられた田《た》から漸次《ぜんじ》に深《ふか》い緑《みどり》を染《そ》めて行《ゆ》く。田《た》が凡《すべ》て植《う》ゑ畢《をは》つた時《とき》には畦畔《くろ》にも短《みじか》い草《くさ》が生《は》えて居《ゐ》て土《つち》の黒《くろ》い部分《ぶぶん》が何處《どこ》にも見《み》えなく成《な》る。自然《しぜん》は始《はじ》めて自己《じこ》の滿足《まんぞく》を得《え》た樣《やう》にからりと快《こゝろ》よい空《そら》を拭《ぬぐ》うて暑《あつ》い日《ひ》の光《ひかり》を投《な》げ掛《か》ける。青田《あをた》
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