で丁寧《ていねい》に捏《こ》ねられた水田《すゐでん》のみである。夏《なつ》が漸《やうや》く深《ふ》けると自然《しぜん》は其《そ》の心《こゝろ》を焦燥《あせ》らせて、霖雨《りんう》が低《ひく》い田《た》に水《みづ》を滿《み》たしめて、堀《ほり》にも茂《しげ》つた草《くさ》を沒《ぼつ》して岸《きし》を越《こ》えしめる。稻草《いなぐさ》を以《もつ》て田《た》の空地《くうち》を埋《うづ》めることが一|日《にち》でも速《すみや》かなればそれだけ餘計《よけい》な報酬《はうしう》を晩秋《ばんしう》の收穫《しうくわく》に於《おい》て與《あた》へるからと教《をし》へて自然《しぜん》は百姓《ひやくしやう》の體力《たいりよく》の及《およ》ぶ限《かき》り活動《くわつどう》せしめる。さうすると百姓《ひやくしやう》は田《た》のやうにどろ/\と往來《わうらい》の土《つち》をも捏《こ》ねて馬《うま》と共《とも》に泥《どろ》に塗《まみ》れながら田植《たうゑ》にのみ屈託《くつたく》する。彼等《かれら》は雨《あめ》を藁《わら》の蓑《みの》に避《さ》けて左手《ひだりて》に持《も》つた苗《なへ》を少《すこ》しづつ取《と》つて後
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