毫《すんがう》も遠慮《ゑんりよ》の無《な》い想像《さうざう》に伴《ともな》ふ陰口《かげぐち》を逞《たくま》しくせしめる好箇《かうこ》の材料《ざいれう》を提供《ていきよう》したのであつた。
一四
夏《なつ》が循環《じゆんくわん》した。
暑《あつ》い日《ひ》の刺戟《しげき》が驚《おどろ》くべき活動力《くわつどうりよく》を百姓《ひやくしやう》の手足《てあし》に與《あた》へる。百姓《ひやくしやう》は馬《うま》や荷車《にぐるま》を駈《か》つて刈《か》り倒《たふ》した麥《むき》をせつせと運《はこ》ぶ。永《なが》い日《ひ》は僅《わづか》な日數《ひかず》の内《うち》に目《め》に渺々《べうべう》たる畑《はたけ》をからりとさせて、暫《しばら》くすると天候《てんこう》は極《きはま》りない變化《へんくわ》の手《て》を一|杯《ぱい》に擴《ひろ》げて、黄色《きいろ》に熟《じゆく》する梅《うめ》の小枝《こえだ》を苦《くるし》めて居《ゐ》る※[#「虫+牙」、第4水準2−87−34]蟲《あぶらむし》も滅亡《めつばう》して畢《しま》ふ程《ほど》の霖雨《りんう》が惘《あき》れもしないで降《ふ》り續
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