けん》は村落《むら》の凡《すべ》ての口《くち》を久《ひさ》しく防《ふせ》ぐことは出來《でき》なかつた。殊《こと》に女房等《にようばうら》の間《あひだ》には
「勘次《かんじ》さんもどうしたつちんだんべ、俺《お》ら可怖《おつかね》えやうだつけぞ」
「本當《ほんたう》によ、丸《まる》つきり狂氣《きちげえ》のやうだものなあ」といふ驚異《きやうい》の聲《こゑ》が到《いた》る處《ところ》に反覆《はんぷく》された。
「唯《たゞ》たあ思《おも》へねえよ、勘次《かんじ》さんもあゝいに仕《し》ねえでもよかんべと思《おも》ふのになあ」嘆聲《たんせい》を發《はつ》しては各自《かくじ》の心《こゝろ》に伏在《ふくざい》して居《ゐ》る或《ある》物《もの》を口《くち》には明白地《あからさま》に云《い》ふことを憚《はゞか》る樣《やう》に眼《め》と眼《め》を見合《みあは》せて互《たがひ》に笑《わら》うては僅《わづか》に
「厭《や》だ/\」といふ底《そこ》に一|種《しゆ》の意味《いみ》を含《ふく》んだ一|語《ご》を投《な》げ棄《す》てゝ別《わか》れるのである。殊《こと》には村落《むら》の若者《わかもの》の間《あひだ》へは寸
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