た。
「櫛《くし》なんざ持《も》つてゐねえぞはあ、それよりやあ、歸《けえ》つて※[#「柿」の正字、第3水準1−85−57]《かき》の木《き》のざく股《また》でも見《み》た方《はう》がえゝと」朋輩《ほうばい》の一人《ひとり》がおつぎへいつた。おつぎは自分《じぶん》の庭《には》の※[#「柿」の正字、第3水準1−85−57]木《かきのき》の幹《みき》が二|股《また》に成《な》つた處《ところ》に櫛《くし》がそつと載《の》せてあるのを發見《はつけん》した。櫛《くし》は鼈甲模擬《べつかふまがひ》のゴムの櫛《くし》であつた。齒《は》が二|枚《まい》ばかり缺《か》けて居《ゐ》た。おつぎは損所《そんしよ》を凝然《ぢつ》と見《み》て直《すぐ》に髮《かみ》へ※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》した。
櫛《くし》の事件《じけん》は其《そ》れつ切《きり》で畢《をは》つた。勘次《かんじ》は何《なに》かにつけてはおつう/\と懷《なつ》かしげに喚《よ》んで一|家《か》は人《ひと》の目《め》に立《た》つ程《ほど》極《きは》めて睦《むつ》ましかつた。然《しか》しかういふ事件《じ
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