》運《はこ》んだ勘次《かんじ》の手《て》がむづとおつぎの首筋《くびすぢ》を捉《とら》へた。彼《かれ》は同時《どうじ》におつぎの小鬢《こびん》を横《よこ》に打《う》つた。おつぎが慌《あわ》てゝ後《うしろ》を向《む》かうとする時《とき》、復《ふたゝ》び劇《はげ》しく打《う》つた手《て》がおつぎの鼻《はな》に當《あた》つた。おつぎは兩手《りやうて》で鼻《はな》を抑《おさ》へて縮《ちゞ》まつた。女同士《をんなどうし》は樅《もみ》の木陰《こかげ》に身《み》を峙《そば》めて手《て》の出《だ》し樣《やう》もなかつた。
一《ひと》つには平生《ふだん》からおつぎに對《たい》する勘次《かんじ》の態度《たいど》を知《し》つて居《ゐ》て其處《そこ》に一|種《しゆ》の恐怖《きようふ》を感《かん》じて居《ゐ》たからでもあつた。
「どうして汝《わ》りや、櫛《くし》なんぞ取《と》らつたんだ」勘次《かんじ》はからびた喉《のど》から絞《しぼ》り出《だ》す樣《やう》な聲《こゑ》で詰問《きつもん》した。
「こうれ、此《この》阿魔奴《あまめ》、しらばくれやがつて、どうしたんだよ」勘次《かんじ》は屈《かゞ》んだ儘《まゝ》のおつ
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