ご》けると思《おも》つて居《ゐ》るけれど、與吉《よきち》と巫山戯《ふざけ》たりして居《ゐ》るのを見《み》るとまだ子供《こども》だといふことが念頭《ねんとう》に浮《うか》ぶ。自分《じぶん》が勘次《かんじ》と相《あひ》知《し》つたのは十六の秋《あき》である。おつぎは恁《か》うして大人《おとな》らしく成《な》るであらうかと何時《いつ》になくそんなことを思《おも》つた。おつぎは十五であつた。
 午餐《ひる》もお品《しな》は欲《ほ》しくなかつた。自分《じぶん》でも今日《けふ》は商《あきなひ》に出《で》られないと諦《あきら》めた。明日《あす》に成《な》つたらばと思《おも》つて居《ゐ》た。然《しか》しそれは空頼《そらだのみ》であつた。お品《しな》は依然《いぜん》として枕《まくら》を離《はな》れられない。有繋《さすが》に不安《ふあん》の念《ねん》が先《さき》に立《た》つた。お品《しな》はつい近頃《ちかごろ》行《い》つた勘次《かんじ》の事《こと》が頻《しき》りに思《おも》ひ出《だ》されて、こつちであれ程《ほど》働《はたら》いて行《い》つたのに屹度《きつと》休《やす》みもしないで錢取《ぜにとり》をして居《
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