胸《むね》を少《すこ》し開《ひら》いて、袂《たもと》で頻《しき》りに煽《あふ》ぎながら樅《もみ》の木《き》の側《そば》に立《た》つていひ掛《か》けた。
「おゝ暑《あつ》いやまあ、咽《むせ》つ返《けえ》る樣《やう》だ」と、袂《たもと》の端《はし》で汗《あせ》を拭《ふ》きながら
「おつぎさん、踊《をど》んねえか」と他《ほか》の一人《ひとり》がいつた。
「俺《お》ら厭《や》だよ、おとつゝあ居《え》つから」おつぎは小聲《こごゑ》でいつた。誘《さそ》うた踊子《をどりこ》は目《め》を蹙《しか》めて居《ゐ》る勘次《かんじ》の容子《ようす》を見《み》て自分《じぶん》が睨《にら》みつけられて居《ゐ》る樣《やう》に感《かん》じたので、他《た》へ孤鼠々々《こそ/\》と身《み》を避《さ》けた。女同士《をんなどうし》の眼《め》には姿《すがた》を變《へん》じた踊子《をどりこ》が皆《みな》一|見《けん》して了解《れうかい》されるのであつた。
踊《をどり》を見《み》ながら輪《わ》の周圍《しうゐ》に立《た》つて居《ゐ》る村落《むら》の女等《をんなら》は手《て》と手《て》を突《つゝ》き合《あ》うて勘次《かんじ》の容子《
前へ
次へ
全956ページ中419ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング