く見《み》えて居《ゐ》た。おつぎは耳《みゝ》に響《ひゞ》く太鼓《たいこ》の音《おと》を聞《き》きながら、まだ縺《ほつ》れぬ髮《かみ》を少《すこ》し首《くび》を傾《かたむ》けつゝ兩方《りやうはう》の拇指《おやゆび》の股《また》で代《かは》り代《がは》りに髱《たぼ》を輕《かる》く後《うしろ》へ扱《こ》いた。おつぎは汗《あせ》を拭《ぬぐ》つてさつぱりとした身體《からだ》へ復《ま》た浴衣《ゆかた》を着《き》た。
「おとつゝあ、あの太鼓《たいこ》は何處《どこ》だんべ」おつぎは帶《おび》の端《はし》を氣《き》にして後《うしろ》へ手《て》を廻《まは》しながら聞《き》いた。
「どれ、あの遠《とほ》くのがゝ、分《わか》るもんか何處《どこ》だか」勘次《かんじ》は燃《も》えた處《ところ》だけがつくりと減《へ》つた蚊燻《かいぶ》しの青草《あをくさ》に目《め》を注《そゝ》ぎながら氣乘《きのり》のしない樣《やう》にいつた。
「俺《お》ら方《はう》へはまあだ、他村《ほかむら》から來《く》る頃《ころ》ぢやあんめえな」
「おとつゝあ等《ら》がにや分《わか》るもんかよ、そんなこと」
「そんでも、他村《ほかむら》から來《く
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