、24−7]《ねえ》が處《とこ》へでも來《き》て見《み》ろ」といひながら忙《せは》しくぽつと一燻《ひとく》べ落葉《おちば》を燃《もや》して衣物《きもの》を灸《あぶ》つて與吉《よきち》へ着《き》せた。
「よき[#「よき」に傍点]は利口《りこう》だから※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、24−9]《ねえ》が處《とこ》に居《ゐ》るんだぞ」お品《しな》はいつた。おつぎは自分《じぶん》の筵《むしろ》の上《うへ》へ抱《だ》いて行《い》つた。おつぎの手《て》は落葉《おちば》の埃《ほこり》で汚《よご》れて居《ゐ》た。再《ふたゝ》び庖丁《はうちやう》を持《も》つた時《とき》大根《だいこ》には指《ゆび》の趾《あと》がついた。おつぎは其《その》手《て》を半纏《はんてん》で拭《ぬぐ》つた。與吉《よきち》は側《そば》で刻《きざ》まれた大根《だいこ》へ手《て》を出《だ》す。
「危險《あぶねえ》よ、さあ此《これ》でも持《も》つて居《ゐ》ろ」おつぎは切《き》り掛《か》けの大根《だいこ》をやつた。與吉《よきち》は直《すぐ》にそれを噛《か》ぢつた。
「辛《から》くて仕《し》やうあんめえなよ
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