つたつ》して來《き》たとはいひながら、竊《ひそか》に其《その》手《て》を執《と》られた時《とき》は、後《あと》では寧《むし》ろ悔《く》いるまでも羞恥《はぢ》と恐怖《おそれ》とそれから勘次《かんじ》を憚《はゞか》ることから由《よ》つて來《きた》る抑制《よくせい》の念《ねん》とが慌《あわ》てゝ其《そ》の手《て》を振《ふ》り※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《もき》らせるのであつた。其《そ》れが段々《だん/\》厭《いや》でない誘惑《いうわく》の手《て》に乘《の》つて甘《あま》い味《あぢ》を僅《わづか》に感《かん》ずる程度《ていど》まで近《ちか》づいた刹那《せつな》一|切《さい》が破壞《はくわい》し去《さ》られたのである。おつぎは以前《いぜん》に還《かへ》つて恐怖《きようふ》の手《て》に深《ふか》く其《そ》の身《み》を沒却《ぼつきやく》せねばならなく成《な》つた。深《ふか》い罪惡《ざいあく》を包藏《はうざう》して居《ゐ》ない其《そ》の夜《よ》の事件《じけん》はそれで濟《す》んだ。勘次《かんじ》は依然《やつぱり》おつぎには只《たゞ》一《ひと》つしか無《な》い大樹《たいじゆ》の陰《かげ
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