石《といし》の破片《かけ》で氷《こほり》を叩《たゝ》いて見《み》た。おつぎは大戸《おほど》を開《あ》け放《はな》して置《お》いたので朝《あさ》の寒《さむ》さが侵入《しんにふ》したのに氣《き》がついて
「おつかあ、寒《さむ》かなかつたか、俺《お》ら知《し》らねえで居《ゐ》た」いひながら大戸《おほど》をがら/\と閉《し》めた。闇《くら》くなつた家《いへ》の内《うち》には竈《かまど》の火《ひ》のみが勢《いきほ》ひよく赤《あか》く立つた。おつぎは
「おゝ冷《つめ》てえ」といひながら竈《かまど》の口《くち》から捲《まく》れて出《で》る※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《ほのほ》へ手《て》を翳《かざ》して
「今朝《けさ》は芋《いも》の水《みづ》氷《こほ》つたんだよ」とお袋《ふくろ》の方《はう》を向《む》いていつた。
「うむ、霜《しも》も降《ふ》つたやうだな」お品《しな》は力《ちから》なくいつた。戸口《とぐち》を後《うしろ》にしてお品《しな》は竈《かまど》の火《ひ》のべろ/\と燃《も》え上《あが》るのを見《み》た。
「何處《どこ》でも眞白《まつしろ》だよ」おつぎは竹《たけ》の火箸《ひ
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