く見《み》える警察官《けいさつくわん》が恐《おそ》ろしくてどうしても足《あし》が進《すゝ》まないのである。
「そりや書付《かきつけ》なんぞは、旦那《だんな》が書《か》いて遣《や》るから心配《しんぱい》にや成《な》らないがね」内儀《かみ》さんは漸《やうや》く近所《きんじよ》の者《もの》を一人《ひとり》跟《つ》いてくやうにして遣《や》るといふことにしたので被害者《ひがいしや》も思《おも》ひ切《き》つて出《で》ることに成《な》つた。彼等《かれら》が歸《かへ》つた時《とき》は反對《あべこべ》に威勢《ゐせい》がよかつた。
「どうしたつけね」聞《き》かれて
「髭《ひげ》のかう生《は》えた部長《ぶちやう》さんだつていふ可怖《おつかね》え人《ひと》でがしたがね、盜《ぬす》まつたなんて屆《とゞ》けしてゝさうして警察《けいさつ》へ餘計《よけい》な手間《てま》掛《か》けて不埓《ふらち》な奴《やつ》だなんて呶鳴《どな》らつた時《とき》にやどうすべかと思《おも》つて、そんぢや其《そ》の書付《かきつけ》持《も》つて歸《けえ》りますべつて云《い》ふべかと思《おも》ひあんしたつけ、さうしたら暫《しばら》く書付《かきつ
前へ
次へ
全956ページ中326ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング