《で》て船《ふね》が現《あら》はれた。渡《わた》し船《ぶね》が深夜《しんや》に人《ひと》を乘《の》せたのでしやぶつといふ響《ひゞき》は舟棹《ふなさを》が水《みづ》を掻《か》つ切《き》る度《たび》に鳴《な》つたのである。おつぎは又《また》土手《どて》へ戻《もど》つて大《おほ》きな川柳《かはやなぎ》の傍《そば》に身《み》を避《さ》けた。二三|語《ご》を交換《かうくわん》して人《ひと》は去《さ》つたやうである。船頭《せんどう》は闇《くら》い小屋《こや》の戸《と》をがらつと開《あ》けて又《また》がらつと閉《と》ぢた。おつぎは暫《しばら》く待《ま》つて居《ゐ》てそれからそく/\と船《ふね》を繋《つな》いだあたりへ下《お》りた。おつぎは直《す》ぐ側《そば》でかさ/\と何《なに》かが動《うご》くのを聞《き》くと共《とも》に、ゐい/\と豚《ぶた》らしい鳴聲《なきごゑ》のするのを聞《き》いた。
「行《え》くのかあ」とまだ眠《ねむ》らなかつた船頭《せんどう》は突然《とつぜん》特有《もちまへ》の大聲《おほごゑ》で呶鳴《どな》つた。おつぎは驚《おどろ》いて又《また》一|散《さん》に土手《どて》を走《はし》つた
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