ひか》つて居《ゐ》る。夜《よる》の手《て》は對岸《たいがん》の松林《まつばやし》の陰翳《かげ》を其《そ》の水《みづ》に投《な》げて、川幅《かわはゞ》は僅《わづか》に半分《はんぶん》に蹙《せば》められて見《み》える。蟋蟀《こほろぎ》は其處《そこ》らあたり一|杯《ぱい》に鳴《な》きしきつて、其《そ》の聚《あつま》つた聲《こゑ》は空《そら》にまで響《ひゞ》かうとしては沈《しづ》みつゝ/\、それがゆつたりと大《おほ》きな波動《はどう》の如《ごと》く自然《しぜん》に抑揚《よくやう》を成《な》しつゝある。おつぎは到頭《たうとう》渡船場《とせんば》まで來《き》た。おつぎはそれから水際《みづぎは》へおりようとすると水《みづ》を渡《わた》つて靜《しづ》かに然《しか》も近《ちか》く人《ひと》の聲《こゑ》がして、時々《ときどき》しやぶつといふ響《ひゞき》が水《みづ》に起《おこ》る。不審《ふしん》に思《おも》つて躊躇《ちうちよ》して居《ゐ》ると突然《とつぜん》目《め》の前《まへ》に對岸《たいがん》の松林《まつばやし》の陰翳《かげ》から白《しろ》く光《ひか》つて居《ゐ》る水《みづ》の上《うへ》へ舳《へさき》が出
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