》を濟《すま》してまだ眠《ねむ》らずに居《ゐ》たのであつたらう。それは高瀬船《たかせぶね》の船頭夫婦《せんどうふうふ》が、足《た》りても足《た》りなくても自分《じぶん》の家族《かぞく》の唯一《ゆゐいつ》の住居《すまゐ》である其《そ》の舳《へさき》に造《つく》られた箱《はこ》のやうな狹《せば》いせえじの中《なか》で噺《はな》して居《ゐ》る聲《こゑ》であつた。乳呑兒《ちのみご》の泣《な》く聲《こゑ》も交《まじ》つて聞《きこ》えた。おつぎは後《あと》へ退去《すさ》つた。おつぎは殆《ほと》んど無意識《むいしき》に土手《どて》を南《みなみ》へ走《はし》つた。處々《ところ/″\》誰《だれ》かゞ道芝《みちしば》の葉《は》を縛《しば》り合《あは》せて置《お》いたので、おつぎは幾度《いくたび》かそれへ爪先《つまさき》を引《ひ》つ掛《か》けて蹶《つまづ》いた。
 土手《どて》の篠《しの》は段々《だん/\》に疎《まば》らに成《な》つて水《みづ》が一|杯《ぱい》に見《み》えて來《き》た。鬼怒川《きぬがは》の水《みづ》は土手《どて》より遙《はるか》に低《ひく》く闇《やみ》の底《そこ》にしら/\と薄《うす》く光《
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