かと思《おも》ふやうにしつとりとして居《ゐ》ては、軈《やが》てざわ/\と鳴《な》つた。おつぎは草刈鎌《くさかりがま》でざくり/\と其《そ》の穗《ほ》を伐《き》つた。さうしてぎつと押《お》し込《こ》んで重《おも》く成《な》つた草刈籠《くさかりかご》を脊負《せお》つた。其處《そこ》らの畑《はたけ》には土《つち》が眼《め》を開《ひら》いたやうに處々《ところ/″\》ぽつり/\と秋蕎麥《あきそば》の花《はな》が白《しろ》く見《み》えて居《ゐ》る。おつぎは足速《あしばや》に臺地《だいち》の畑《はたけ》から蜀黍《もろこし》の葉《は》のざわつく小徑《こみち》を低地《ていち》の畑《はたけ》へおりて漸《やうや》くのことで鬼怒川《きぬがは》の土手《どて》へ出《で》た。おつぎは四《よ》つ偃《ばひ》に成《な》つて芝《しば》に捉《つかま》りながら登《のぼ》つた。其《そ》の時《とき》おつぎの心《こゝろ》には斜《なゝめ》に土手《どて》の中腹《ちうふく》へつけられた小徑《こみち》を見出《みいだ》して居《ゐ》る程《ほど》の餘裕《よゆう》がなかつたのである。土手《どて》の内側《うちがは》は水際《みづぎは》から篠《しの》が一
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