出《で》た。突然《とつぜん》ぱた/\とけたゝましい羽音《はおと》が直《すぐ》頭《あたま》の上《うへ》で騷《さわ》いだ。竹《たけ》の梢《こずゑ》に泊《とま》つて居《ゐ》た鳩《はと》が俄《にはか》に驚《おどろ》いて遠《とほ》く逃《に》げたのである。
「さむしかないかい」内儀《かみ》さんは垣根越《かきねご》しに聞《き》いた。
「大丈夫《だいぢやうぶ》ですよ、お内儀《かみ》さん」おつぎは少《すこ》し歩《ある》き掛《か》けていつた。
「おやもうそつちの方《はう》へ行《い》つたのかい、それぢや彼處《あすこ》を叩《たゝ》くんだよ」内儀《かみ》さんはいつて分《わか》れた。おつぎは直《すぐ》に自分《じぶん》の裏戸口《うらどぐち》に立《た》つた。そつと開《あ》けて這入《はひ》つて見《み》ると、自分《じぶん》の家《うち》ながらおつぎはひやりとした。塒《とや》の鷄《にはとり》は闇《くら》い中《なか》で凝然《ぢつ》として居《ゐ》ながらくゝうと細《ほそ》い長《なが》い妙《めう》な聲《こゑ》を出《だ》した。鼠《ねずみ》が二三|匹《びき》がた/\と騷《さわ》いで、何《なに》かで壓《おさ》へつけられたかと思《おも》ふや
前へ 次へ
全956ページ中315ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング