じん》の力《ちから》に倚《よ》つてのみ救《すく》はれるものと念《ねん》じて居《ゐ》る。内儀《かみ》さんも主人《しゆじん》を待《ま》ちあぐんで居《ゐ》る。さうして復《また》夜《よる》が來《き》た。内儀《かみ》さんはもう凝然《ぢつ》としては居《ゐ》られない。それでおつぎを連《つ》れて、提灯《ちやうちん》を點《つ》けて竊《ひそか》に土藏《どざう》の二|階《かい》へ昇《のぼ》つた。
「おとつゝあ」おつぎは聲《こゑ》を殺《ころ》しながら力《ちから》を入《い》れていつた。勘次《かんじ》は返辭《へんじ》がない。おつぎは更《さら》に幾度《いくたび》か喚《よ》んでそれからお内儀《かみ》さんが喚《よ》んだ時《とき》汚《よご》れた身體《からだ》を桶《をけ》の中《なか》から現《あら》はした。
「旦那《だんな》がまだ歸《かへ》らないのでね、警察《けいさつ》の方《はう》の噺《はなし》が出來《でき》ないで困《こま》つて居《ゐ》るんだが、どうだねお前《まへ》警察《けいさつ》へ出《で》ても盜《と》らないといひ切《き》れるかね、さうすりや私《わたし》が始末《しまつ》をして遣《や》るがね」内儀《かみ》さんはいつて聞《き》か
前へ 次へ
全956ページ中312ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング