暖《あたゝ》まるに連《つ》れて始《はじ》めて蘇生《いきかへ》つたやうに恍惚《うつとり》とした。いつまでも沈《しづ》んで居《ゐ》たいやうな心持《こゝろもち》がした。與吉《よきち》が泣《な》きはせぬかと心付《こゝろづ》いた時《とき》碌《ろく》に洗《あら》ひもしないで出《で》て畢《しま》つた。それでも顏《かほ》がつや/\として髮《かみ》の生際《はえぎは》が拭《ぬぐ》つても/\汗《あせ》ばんだ。さうしてしみ/″\と快《こゝろよ》かつた。お品《しな》は衣物《きもの》を引《ひ》つ掛《か》けると直《す》ぐと與吉《よきち》を内懷《うちふところ》へ入《い》れた。お品《しな》の後《あと》へは下女《げぢよ》が這入《はひ》つたので、おつぎは其《その》間《あひだ》待《ま》たねばならなかつた。おつぎが出《で》た時《とき》はお品《しな》の身體《からだ》は冷《さ》め掛《か》けて居《ゐ》た。お品《しな》は自分《じぶん》が後《あと》ではい[#「い」に「ママ」の注記]ればよかつたのにと後悔《こうくわい》した。
 お品《しな》が自分《じぶん》の股引《もゝひき》と足袋《たび》とをおつぎに提《さ》げさせて歸《かへ》つた時《とき》 
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