ほ》りが出來《でき》ないやうな實例《ためし》が幾《いく》らも世間《せけん》には有《あ》るもんだからね」内儀《かみ》さんは反覆《くりかへ》していつた。然《しか》し容易《ようい》に彼等《かれら》の心《こゝろ》は落居《おちゐ》ない。暫《しばら》く噺《はなし》は途切《とぎれ》て居《ゐ》た。
「遠《とほ》くの方《はう》へ遣《や》つたなんていつたつけがおりせは又《また》孫《まご》が出來《でき》た相《さう》だね、今度《こんど》のは男《をとこ》だつてそれでも善《よ》かつたねえ」
内儀《かみ》さんは側《そば》に居《ゐ》た老母《ばあさん》へ向《む》いて突然《とつぜん》恁《か》ういひ掛《か》けた。さうして内儀《かみ》さんは冷《つめ》たく成《な》つて居《ゐ》た茶碗《ちやわん》を手《て》にした。其《そ》れを見《み》て被害者《ひがいしや》の女房《にようばう》は土間《どま》へ駈《か》けおりて竈《かまど》の口《くち》へ火《ひ》を點《つ》けてふう/\と火吹竹《ひふきだけ》を吹《ふ》いた。
「はあいさうでござりますよ、お内儀《かみ》さんの厄介《やつけえ》に成《な》りあんしたつけが、あれも今《いま》ぢや大層《たえそう》え
前へ
次へ
全956ページ中307ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング